第4章 圏域別振興の方向 1 北部圏域

 圏域ごとの振興については、地域の特性を生かし、特色ある産業の振興と快適な居住環境の形成を図る観点から各種施策を講じてきたが、離島・過疎地域を抱える圏域と都市地域を含む圏域において依然として地域間格差が残るなど、県土の均衡ある発展を図る観点から、なお多くの課題を抱えている。
沖縄本島地域においては、中南部の都市地域は経済的な豊かさや生活の利便性が高いものの、人口や諸機能の過度の集中による交通混雑や環境問題等の様々な都市問題が生じている。一方、沖縄本島の北部地域、周辺離島や宮古、八重山の離島地域においては、各種施設等へのアクセスが不便な地域、周辺離島が多く、また、雇用機会の不足等による定住人口の伸び悩みがみられるなど、都市地域と異なる課題を有している。
特に、離島地域においては、若者の定着を促進する雇用機会の創出、保健医療・福祉基盤の整備、教育環境の整備等に多くの課題を抱えている。
このため、圏域別の振興に当たっては、地域の抱える課題を踏まえ、産業や生活の基盤整備を引き続き進めるとともに、地域の特性を最大限に生かし、また、IT、バイオ等の先端的な科学技術も活用しつつ、特色のある産業の振興を積極的に図っていく必要がある。
また、地域においては、行政単位の枠を越えた広域的な取組を視野に入れ、域内の地域間バランスにも配慮しながら施策・事業を効果的に展開するとともに、住民等の積極的な参加のもと、地域の選択と責任に基づく主体的な地域づくりに取り組む必要がある。
さらに、各自治体が単独で全てを自足しようとするいわゆる「フルセット主義」の発想にとらわれることなく、地域連携と交流により他の自治体との役割、機能の分担を図るとともに、行政サービスの向上、行財政の効率化と財政基盤の確立等に向け、市町村の合併等も視野に入れた効率的な施策展開を推進する必要がある。
圏域の区分については、沖縄の自然的・地理的条件、土地利用の状況、社会経済の状況などを踏まえ、県全域を北部圏、中部圏、南部圏、宮古圏及び八重山圏の5圏域に区分する。

【現状と課題】

 本地域は山林が約7割を占め、動植物の貴重種の生息地であるとともに、沖縄本島の水資源の供給地として大きな役割を果たしているほか、恵まれた海浜景観を有しており、農林水産業や観光・リゾート産業の振興を図ってきたところである。
しかし、これまでの沖縄振興開発事業の推進にもかかわらず、中南部に比較して産業基盤、生活環境基盤の整備水準や所得水準が低く留まるなど、地域の振興が十分には図られなかったことから、進学や就職を機会とした若年層の流出が進んでいる。
近年、北部振興事業の実施により、情報通信関連産業の集積、農林水産業等既存産業の新たな展開が図られ、雇用機会の創出や、定住条件の整備が進みつつあるが、地域の持続的な発展に向けた産業の振興と定住人口の増加がなお大きな課題となっている。

【振興の基本方向】

 北部圏域の振興に当たっては、閣議決定された「普天間飛行場移設先及び周辺地域の振興に関する方針」及び「沖縄県北部地域の振興に関する方針」並びに今後の北部圏域における振興の指針となる「北部振興並びに移設先及び周辺地域振興に関する基本方針」に基づき、人と産業の定住条件の整備による地域の持続的な発展を目指す。
このため、本地域の豊かな自然環境を保全・活用しつつ、産業の振興による雇用機会の創出や、魅力ある生活環境の整備を図ることが必要である。
特に、普天間飛行場移設先及び周辺地域については、若者の定着に向け、空港活用型産業、情報通信関連産業等の新たな産業の集積と既存産業の活性化及び産業基盤の整備等により、魅力ある雇用機会の創出、定住条件の整備等を図るとともに、自然環境の積極的醸成に向けて取り組む。
北部圏域の振興については、振興の効果的な展開を図るため、地理的・自然的特性等の観点から区域を分け、各区域についてそれぞれの地域特性を踏まえて取り組む。
国頭3村においては、豊かな自然や伝統文化等の地域資源を生かしたエコツーリズム、グリーンツーリズム、健康長寿をテーマとした体験・滞在型観光、農林水産業や地場産品の開発等を中心に振興を図る。
本部半島から名護市、宜野座村にかけての地域は、周遊型観光や農林水産業の振興を図るとともに、離島地域とのアクセス機能の充実に努める。また、名護市においては、行政、経済、情報通信、交通結節等の高次の都市機能の整備を進める。
名護市から恩納村の西海岸地域にかけては、国際的な観光・リゾート拠点としての一層の基盤整備を進める。
また、名護市から宜野座村、金武町にかけての東海岸地域では、体験・滞在型観光の振興を図るとともに、西海岸地域との効果的な連携を図る。
離島3村については、地理的な不利性を克服する観点から、交通アクセスの改善や医療、福祉、教育等に係る生活環境を整備するとともに、離島特有の自然環境や文化を生かした体験・滞在型観光や農林水産業を中心に振興を図る。

(1) 産業の振興

 ア 観光・リゾート産業の振興

 基幹産業として地域の他産業のけん引役となることが期待される観光・リゾート産業については、健康・長寿関連産業、農林水産業等他産業との有機的な連携を図りつつ、豊かな自然や伝統文化、地域の営み等、地域との交流機会を提供していく「文化交流型産業」として新たな視点で取り組み、観光の通年化、滞在の長期化を図る。
このため、エコツーリズム、グリーンツーリズム、ブルーツーリズム等の体験・滞在型観光を促進するとともに、健康・保養をテーマとした観光を促進するため、健康増進施設等の整備を図る。さらに、各種イベントの誘致促進やスポーツ・リハビリ機能を備えた施設等の整備により、イベント・スポーツ観光を促進する。
また、国際的観光・リゾート地の形成を目指し、恩納村から名護市を経て本部町に至る西海岸地域に定着している人の流れを拡大し北部地域全体に波及するよう、各観光・リゾート拠点の整備を図るとともに、各拠点の連携強化に向け周遊ルート化を促進する。
このため、国営沖縄記念公園海洋博覧会地区の拠点機能の充実や、世界遺産の今帰仁城跡の整備・保全、自然環境等観光資源の保全・創出に努める。
また、各観光・リゾート拠点のテーマ性を持たせたネットワーク化とともに、アクセス道路、駐車場及びインフォメーション施設等の整備や、総合的な公共交通等のネットワークの充実により、観光客の移動の利便性を高める。
国頭3村にまたがる広大な森林地域については、適切な保全管理や多面的活用をはじめ、国立公園化を検討する。
さらに、赤土流出防止対策等の環境対策による観光資源の維持・向上や、良好な景観の形成、魅力あるまちづくり等を推進し、豊かで美しい観光・リゾート空間の創出を図る。

 イ 農林水産業の振興

 農業用水の確保など生産基盤の整備を推進する。キク、マンゴー等重点的に推進する品目については、拠点産地を形成し、生産拡大とブランド化を図る。さとうきび、パインアップルについては、農業生産法人の育成や生産体制の強化を図る。養豚等畜産については、畜産環境対策を推進する。
また、農林水産物の加工、流通、販売体制の強化を促進するとともに、薬用作物、シークヮーサー、黒糖等の特産品の一層の高付加価値化を図るため、集出荷施設及び農産加工施設の整備を促進する。
木材生産の産地形成及び特用林産物の生産を促進するとともに、県産材の需要喚起を図る。また、森林の持つ多様な機能を持続的に発揮させるため、森林整備を推進するとともに、森林ツーリズム等その多面的活用を図る。
漁港・漁場等の生産基盤整備を推進し、資源管理型漁業の定着を図る。また、モズク、養殖魚介類の生産・流通体制等の強化を促進する。
あわせて、亜熱帯の自然環境条件を踏まえた農林水産技術の開発を推進するため、研究機能の強化を図るとともに、農林水産業の担い手育成機能の強化のため、研修拠点の整備を図る。
また、観光・リゾート産業の振興に寄与するため、都市と農山漁村の交流拠点施設の整備等を図る。

 ウ 商工業の振興

 商工業については、新たな企業の誘致とともに、地場商工業の集積及び活性化を図り、地域経済の発展を目指す。
このため、地域資源の活用のための研究開発を支援するとともに、加工施設等の整備を促進することにより、地域の加工製造業の効率的な事業展開や新たな事業の創出を促進する。また、ITを活用した地場産品の販路拡大に努める。
さらに、中心市街地を活性化するため、市街地の再開発事業等により基盤施設等の整備、魅力ある商業・アミューズメント施設の誘致等を促進するとともに、道路や駐車場の整備を進め、周辺の観光・リゾート拠点との連携を図る。

 エ 情報通信関連産業の振興

 名護市や宜野座村においては情報通信関連施設の整備が進みつつあり、それとともに情報通信関連企業の立地が着実に進展している。
こうしたことから、今後も情報通信産業振興地域制度等の積極的な活用や、通信コストの低減化支援などにより、企業の立地を一層促進し、情報通信関連産業や金融業務の集積を図る。
また、名護市マルチメディア館等の最先端の機能を備えた施設の立地を生かした新たなコンテンツ産業等の集積を促進する。

 オ 環境関連産業及び健康長寿関連産業の振興

 豊かな自然環境の保全や、健康長寿などの地域特性の活用をとおして、環境関連産業や健康長寿関連産業等の新たな産業の振興を図る。
このため、循環型社会の形成を目指し、廃棄物の再資源化等に取り組み、新たな環境関連産業の創出を促進するほか、健康長寿地域としての特性を踏まえ、薬草等を活用した健康食品産業の振興を図る。
あわせて、少子高齢化の進展に対応し、保健医療体制の充実等を通じた健康関連ビジネスの創出を図る。

(2) 産業振興のための基盤整備

 ア 交通及び企業立地基盤の整備

 交通基盤については、北部新空港及び民間航空関連施設の整備を行うとともに、関連産業の立地促進に向けて取り組む。また、規格の高い幹線道路ネットワークの形成を推進するとともに、東西、南北間の交通の利便性の向上に資する道路を整備する。
さらに、北部地域にある港湾の役割分担を踏まえたうえで、国際交流や物流機能の再構築に必要な拠点となる港湾整備に向けて取り組むとともに、海上交通や航空交通による本島・離島間の交通アクセスの改善を図る。
また、物流コスト低減化に向け、地理的不利性の克服に取り組む。
企業立地基盤については、産業の集積を支える情報通信基盤、研究施設や複合機能型産業団地等、企業立地に向けた受け皿を整備するとともに、起業促進のための総合的な支援対策を強化する。

 イ 研究開発の促進と人材の育成等

 専門的な技術や知識を身につけた人材は、地域における産業の創出・育成に重要な役割を果たしている。このため、産学官が連携し、情報通信関連産業や金融関連業務をはじめ各分野にわたる人材の育成・確保や雇用・職業能力開発を推進するとともに、教育機関の充実や、研究機関の整備・充実を図る。名桜大学、沖縄工業高等専門学校、沖縄北部雇用能力開発総合センター(仮称)においては、それぞれの特性を生かした人材育成を図る。
また、情報通信の高度化に対応するため、教育機関の情報化を推進するとともに、人材育成に資する教育・研修の機会を充実するための支援策を推進する
さらに、職業意識を高めるため、企業と教育機関等が連携して行うインターンシップの促進を図るとともに、国際化への対応や優れた経営能力と企業家精神に富んだ人材育成の環境整備を図る。
情報通信関連産業等の新たな展開のため、産学官が連携した研究開発を促進するとともに、今後発展が期待される健康長寿関連、食品関連、バイオ関連、環境関連などの産業化のための研究開発を促進する。
あわせて、部瀬名岬を中心とする地域においては、国際交流を促進する観点から、国際コンベンション機能の充実や国際会議等の開催に継続的に取り組み、国際コンベンション拠点としての魅力のPRに努める。

(3) 定住条件の整備

 北部地域への定住を促進するため、生活環境を整備する。このため、住宅、道路等の整備をはじめ、上下水道、集落排水施設等を整備する。
風力発電等の新エネルギーの活用に向けた取組や廃棄物処理施設等の整備の促進、利用の高度化を図り、環境に配慮した循環型社会を形成する。
また、保健医療及び福祉については、関連施設の整備を推進するとともに、保健医療及び福祉従事者の養成・確保や地域福祉のネットワークづくり、救急医療体制の充実強化等を図る。あわせて、子育て支援体制の整備充実を図る。
地域交流等の中心となるコミュニティ拠点の整備を図るとともに、快適で潤いのある地域形成のため、公園等スポーツ・レクリエーション施設の整備を図る。
教育については、通学に係る利便性の向上に努めることにより、教育環境の整備を図る。

(4) 普天間飛行場移設先及び周辺地域の振興

 普天間飛行場移設先及び周辺地域の振興については、北部新空港を活用した空港活用型産業の誘致・育成を図るとともに、情報通信関連産業、金融業及び金融関連業務等の集積や既存産業の活性化を図りつつ、空港へのアクセス道路や複合機能型産業団地等、企業立地に向けた基盤を整備する。
情報通信基盤をはじめ居住環境を含めた周辺環境の整備を図り、金融センターにふさわしいまちづくりを進める。
また、魅力ある生活基盤や住民福祉の向上、利便性の確保につながる施設整備を進めるとともに、公園や港湾、市街地開発等の整備や公共機関の設置に努める。
さらに、優れた自然環境の積極的醸成を図る事業を推進するとともに、それに必要な研究機関の設置に努める。

(5) 駐留軍用地跡地利用の促進

 SACO最終報告に示された返還予定施設である北部訓練場や、安波訓練場の跡地については、自然環境の適切な保全及び森林地域の保全・整備を進めるとともに、その資源を生かした活用を図る。
また、ギンバル訓練場の跡地については、その自然・地域特性を生かした整備を図る。