第3章 振興施策の展開 3 科学技術の振興と国際交流・協力の推進

 「知の世紀」といわれる21世紀の社会経済の発展に向け、付加価値の高い産業を創出し、活力ある自立型経済を構築するとともに、県民生活の向上に資するため、科学技術の振興に積極的に取り組む。

 さらに、経済、学術、文化及び平和等様々な分野で、アジア・太平洋地域との交流・協力を推進し、我が国のみならずアジア・太平洋地域の社会経済及び文化の発展に寄与する地域の形成を目指す。

 また、沖縄の歴史的、地理的特性を踏まえ、アジア・太平洋地域における平和交流拠点の形成を目指す。

 さらに、国際交流・協力拠点の形成に必要な交通基盤等の整備を図る。

(1) 大学院大学等による科学技術の振興と学術研究・交流拠点の形成

 科学技術は、21世紀の沖縄の社会経済を発展させる大きな原動力となるものである。科学技術から得られる知的資産の集積は、新たな技術革新を促進し、新産業の創出や既存産業の高度化及び市場競争力の向上に寄与するとともに、医療・福祉、環境、食料・エネルギー問題の解決など、県民の生活全般にわたる質の向上につながる。

 沖縄における科学技術の振興及び我が国の科学技術の進歩の一翼を担うため、また、アジア・太平洋地域さらには世界に開かれた中核的研究機関として、我が国の大学のあり方のモデルとなるような新たな発想を持った世界最高水準の自然科学系の大学院大学等を核とした大学、公的研究機関、民間の研究所などの教育研究機関の整備充実に努め、科学技術の集積を図る。

 沖縄における学術研究・交流拠点の形成を目指し、琉球大学をはじめとする県内の大学、国及び沖縄県の研究機関等の整備や研究開発機能の充実強化を図り、これらの研究機関を軸としたIT、バイオ、環境、食品工業等の分野における研究開発を積極的に促進する。サンゴ礁保全やマングローブ研究、亜熱帯農業技術等、沖縄の亜熱帯特性を活用した研究開発を総合的に推進する。

 また、国際的な地球環境情報の集積・発信拠点である国際海洋環境情報センター等を中核として地球環境、海洋気象等に関する研究ネットワークの整備を促進するとともに、独立行政法人国際農林水産業研究センター(JIRCAS)沖縄支所の研究施設を充実し、熱帯・亜熱帯作物の栽培・利用技術及び島しょ農業の環境管理技術に関する研究等を推進する。アジア・太平洋地域の国々が抱える地球規模の諸問題に関する学術研究と情報発信ができるアジア・太平洋地域の研究拠点の整備に向けて取り組む。

 さらに、大学等の研究成果を産業や経済の発展に生かすため、これらの学術研究拠点と県内外の研究機関や関係団体との連携の強化を図るとともに、沖縄が有する資源や特性等を活用した産学官連携による共同研究開発を積極的に支援することにより関連産業の振興を図る。特に、産業技術総合研究所及び科学技術振興事業団においては、沖縄における科学技術の振興や産学官共同研究の成果の普及、情報提供等の支援を積極的に行う。

 また、大学における研究成果の移転を行うTLOの創設を支援し、地域産業への速やかな技術移転を促進するとともに、大学の知的資産や大学で開発された技術を活用した大学発ベンチャーの創出を図る。

 また、これらの研究成果については、国際会議の開催等を通して広く世界へ向けて発信する。

 科学技術を担う人材育成や確保については、国内外を問わず広く研究者や学生の派遣・受入れや交流を積極的に推進するとともに、次代を担う子どもが科学技術への関心を高めるための施設整備の促進等、科学技術と親しむ機会の提供に努める。

(2) 国際交流・協力の推進

 国際化に対応し得る人材を育成・確保するとともに、地域における国際化に向けた取組や世界各地とのネットワークの確立を図る。また、県民、NPO、企業、大学、行政等は文化、経済、平和等様々な分野における国際交流・協力を展開する。

 このため、留学生派遣制度や同時通訳者養成制度を有効に活用し、英語を中心とした外国語が堪能な人材を育成するとともに、これらの人材の活用を図る。

 また、国際交流・協力に対する啓発に努めるとともに、積極的に県民の英語力の向上を図る。

 さらに、留学生研修生の受入体制を強化するとともに、NGO、NPO等との交流の場を設けるなど、地域における国際交流を進める。

 相手国の習慣、宗教、文化等の多様性を踏まえ、友好親善交流や海外の地方自治体との姉妹都市提携を促進する。

 国際交流基金は、国際文化交流を目的とした人物の派遣や招聘、催し等の積極的な実施に努める。

 平和の礎及び平和祈念資料館をはじめとする平和学習拠点の活用を図り、展示品等をデジタル情報として記録し、閲覧できるようにするとともに、平和に関する国際会議等の開催誘致に努め、国連機関を含む国際機関等の誘致の可能性も検討し、沖縄平和賞事業を実施するなど平和の大切さを沖縄から世界に発信する。

 また、海外事務所や民間経済団体等との連携による経済交流や福建省との交流促進、ワールドウチナーンチュ・ビジネス・アソシエーション(WUB)との連携強化、世界のウチナーンチュ大会の開催等により世界各地とのネットワークの形成を図る。

 JICA沖縄国際センターを活用し、開発途上地域からのIT、保健・医療等の分野における研修、青年海外協力隊に対する訓練等、開発途上地域の持続的発展、人材育成のための諸事業を積極的に推進する。

 さらに、ハワイ州等との地域間協力を促進するとともに、遠隔医療システムを用いた医療協力などの成果を他の島しょ地域に移転するための仕組みを整備する。

 あわせて、国際貢献拠点形成に向けた環境等のモニタリング機能の充実や緊急医療機能の高度化等を図る。

(3) 国際交流・協力拠点の形成を目指した基盤整備

 国際社会に貢献する特色ある地域として、国際交流・協力拠点の形成に向け、アジア・太平洋地域における人、物、情報の結節点として必要な交通アクセスの拡充等の環境整備を図る。

 このため、那覇空港については、沖合いへの空港施設の展開等について検討を行い、必要な整備を図るとともに、旧国内線ターミナル地区の利用について検討を行い、必要な整備を図る。また、貨物ターミナル等狭あい化が進みつつある地区について、所要の施設の整備拡充を図る。

 あわせて、航空会社の就航を促すための条件整備に努め、国際航空ネットワークの拡充を図る。

 また、那覇港の国際航路ネットワークの拡充を図るため、国際クルーズ等に対応した旅客船バース等を整備するとともに、利便性を高めるため、那覇、泊、新港、浦添の4ふ頭地区の機能再編を促進する。

 さらに、国際コンベンション拠点を目指し、国際会議を誘致するとともに、国際会議場等のコンベンション施設の整備を促進する。

 加えて、那覇空港自動車道、沖縄西海岸道路等規格の高い道路の整備、及び本島東西間や南北幹線の道路網の整備を図るとともに、国際的な情報通信ハブの形成に向けた基盤整備を図る。